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2025-10-19 2025 北海道クラブマンカップ最終戦レポート!!

秋も深まる十勝、シーズン締め括りのラストラウンド! 経験豊かな実力派ドライバーがその実績通りに表彰台上段を獲得!! 2025年 北海道クラブマンカップレースシリーズ第5戦 2025年 10月19日(日) 十勝スピードウェイ(クラブマンコース)![]()
~地元にサーキットが存在することの幸せ!~ 1980年代の半ば、六本木ではワンレン・ボディコンのお嬢さんたちがディスコで踊り狂い、銀座のクラブでは1本数万円のシャンパンが次々と抜かれ、ホステスの胸元に万札を差し込み遊びまわる男達がどこにもいた頃の話。 あだ花のような「バブル景気」に日本中が沸きかえり、有り余ったカネは幸いにしてモータースポーツ界にも流れ込んできた。 札幌のモエレ沼を囲むようなレイアウトのサーキット建設の噂が囁かれ、さらに千歳空港近くでも国際級サーキット建設の構想が浮上してきたのである。 この話の根元は「レイトン・ハウス」で知られる丸晶興産であり、それなりに具体性もあったのだが、バブルはわずか6年ほどで崩壊してしまう。 そうなればサーキット建設の話など当然ながら消えてしまうはずだったのだが、北海道内でたった一つ残ったのが十勝スピードウェイ建設だった。 これは事業主体が建設業団体であり、施工も自社で行うという他とは違った内容であり、工事は中断せず、バブル崩壊後となったが完成するのである。 サーキットは完成しオープンしたのだが、バブルは跡形もなく消え去りその後、当初の事業主体が解散してしまうなど紆余曲折はあったが、 現在のオーナーが名乗りを上げた事により経営は改善、今では北海道モーターレーシング界の中心として存在感は増すばかり。 確かに人口集積地の札幌から更別は250キロと遠隔地である。SUGOは仙台市内から30キロ足らずで、富士スピードウェイは東京から100キロほど、鈴鹿サーキットは名古屋から70キロで電車でも行ける。 それと比較すれば不利ではあるが、居住地域にレーシングコースがあり、この先もレースシリーズが開催され続けるという事実こそが重要なのだ。 遠隔地ではあるが、いつでも走れるコースがある事の“幸せ”を胸にレース活動を続けていこうではないか。 <TGR Yaris Cup> ~“道産子ドライバー”阿部晃太選手が期待に応える初勝利!~
日本レース界最大規模であるナンバー付車両ワンメイクレースシリーズ「TGR Yaris Cup」、今回が北海道シリーズの最終戦である。 参加は28台なのだが、その中で道内ドライバーは半数以上と最大勢力。そのため、有力道外勢に主導権を握られ続けてきた状況が変わり始めるかも・・という期待の一戦となったのである。 運営団体であるTGRが設定する前日の専有走行、基本的に参加車両すべてに出走義務があるため、その“義務”消化のためコースインするが、わずか数周で終えるドライバーも多い。 そのため、ここでのタイムはあまりレース結果を占う参考にはならない場合もあるのだが、中には最終チェックを兼ねてアタックするドライバーもいる。 その一人が#831橋本優で、シリーズ第2戦のポールタイムをコンマ6秒ほど速いタイムをマーク。
北海道期待の#735阿部晃太も同等のタイムで、仕上がりは順調のようだ。 その晃太の父親である#135阿部晃久、キャップが緩んでしまい、オイルを吹いて走行を中断したが、エンジン本体の損傷はなかったようでレースに支障はない様子。 この“北海道で一番速い親子!?”である2人の走りから目を離すことは出来まい。 予選のタイムアタック、コースインして2周ほどタイヤに熱を入れ、クルマの調子を確認し集中を高めてからアタックが常道であり、 今シーズンは2連勝中の#34渡辺圭介をはじめとする4~5台が連なったまま同時にアタックに入る。 その中で最も勢いがあったのが#735阿部(晃)だろう。
「北海道シリーズですからね、ホームコースの地元ドライバーがチャンピオンにならなくちゃダメなんです! 頑張りますよ!」と気迫みなぎる走りで8月の第2戦でマークした自身の予選タイムを1秒近くも削り取って見事にポールポジションンを決めるのだ。 2番手に専有走行でトップだった#831橋本がつけ、チャンプ候補最有力の#34渡辺は4番手どまり。 その後方の5番手が#135阿部、「ここは親父の権威を見せないとね! 息子のサポートはもちろんだけど、俺自身ももっと上位を狙いますよ!」と意気軒昂。 とはいえ#34渡辺もタイトルを狙うためこの北海道シリーズに的を絞って参戦してきたドライバーで、前2戦の連勝を見ても実力は充分であり、レース展開がどうなるか期待が高まったのである。 そして決勝、最高のダッシュを見せたのはポールの#735阿部(晃)だった。レッドランプ消灯と共に一瞬クルマをセンターに振るが、そこからは一直線にアウト側を加速してコーナリング速度を上げて、後続とは明らかな差をつけてホールショットを奪うのだ。
そのまま2周目に入るところでフルコースイエローとなり、セフティカー導入のペースランとなる。 激しい先陣争いの中で、コーナーアウト側に設置されたトラックリミット違反防止のポラードが次々と倒されてしまったのだ。 そのコース修復のため、2周ほどのセフティカーランが続き、5周目にレース再開。 先頭は#735阿部(晃)で変わらないが、2番手につけた#831橋本にはフライングで10秒加算のペナルティが課され、 僅差の6番手にいた#390前田貴行にもポラード破損でペナルティ、この時点でトップ争いからは脱落となってしまう。 セフティカーランのため各車の間隔は縮まり、一直線となってのレース再開となるが、このチャンスを生かしたのは#34渡辺、先行する#753笠原潤一郎を抜き去り2番手に上昇してきたのだ。
それを止めるために#34渡辺の前へ出なければならなかった#135阿部だが、「息子のサポートは出来なかった、残念!」と、スタートダッシュに失敗し、予選グリッドと同じ5番手にとどまっていた。 レースはそのまま、#735阿部(晃)がほぼ独走のままチェッカーとなるのだが、チャンピオンタイトルは2位に入った#34渡辺の手中に転がり込んでいった。
「北海道シリーズとなってから道内勢が優勝するのは初めてで、それは嬉しいんですが、タイトルを取れなかったのが悔しい!でも光明は見えてきましたからね、来シーズンは負けません!」 と#735晃太が言えば、#34渡辺も「このタイトルを奪い返したいというなら僕もまた、来シーズンもこのコースに戻ってきます!」と宣言。 来シーズン、この両雄のバトルが大いに楽しみだし、2人の速さを上回るほどの力量を持ったドライバーの登場を待ちたいと思う。
<VITA-01> ~暫定表彰後のどんでん返し! seto jungo選手がデビューイヤーでの初優勝達成!!~
昨年まではこの最終戦、2レース開催のダブルヘッダーで行われ、それまでの上位陣が大きく入れ替わる可能性を持った一戦となっていたのだが、今シーズンは1レースのみ開催。 第4戦は出走して完走すればすべてのドライバーに同一ポイントが与えられる耐久レースであり、カウント外。つまり純粋なスプリントレースとしては4戦のシリーズなのだ。 そのため例年より最終戦の重要性が減少、コンスタントに高得点を獲得するレース戦略が必要なシーズンとなっていたわけである。 このVITA-01レースでは道内最大勢力を誇る恒志堂レーシング、翌週に岡山で開催されるスーパー耐久レースを優先してか、今回も#910工藤大祐の1台だけが出走。
とはいえ、ここまで耐久を含めて4連勝中の#778四倉悠聖、瀬戸惇吾改め#777「seto jungo」を擁する栄建設TBRチームの他、 #77村上泰規や#30坂本幸照など、
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トップを争うレギュラー陣はすべて参戦しているのだから最終戦にふさわしいバトルを展開してくれるはずだ。 朝9時からと早い時間からとなった予選、薄日は差すものの路面温度は低いままで、どうタイヤの温度を上げるかが勝負となった。 そのためほぼ全力で周回を重ねタイヤグリップを確認し、アタックは終了直前という作戦のチームが多くなったのは当然だろう。 まずターゲットタイムである1分30秒台に入れてきたのは#778四倉、それを同じラップでかわしたのが#77村上で、#30坂本も3番手に上がってくるが第1コーナーアウト側のトラックリミット違反防止用ポラードを倒してしまいピットインを余儀なくされる。 その間に#777setoが3番手タイムをマークし、上位は予想通りの顔ぶれとなる。 予選終了直前、「なかなかタイヤの温まりが遅くて、ラストのラストまで気を抜かずにアタックしようと思ってました。その最後のラップは全力で走り切りました」と言う#778四倉。 そのタイムは昨シーズン全戦優勝というパーフェクトを演じた上野大哲がマークしたタイムを上回る好タイムでポール奪取に成功。 2番手は、「最後のラップに掛けていたんですが、前のクルマに追いついてしまいアタックを諦めなければなりませんでした。あれが無かったらポールを狙えたと思うんですが・・・」と残念そう。 いずれにせよセカンドローまでは栄建設TBRチームと足立眼科Y‘Sチームが交互に並ぶという、これまでも見慣れたグリッドとなった。 そして決勝、ポールの#778四倉が#77村上の機先を制するように進路をインに寄せるのだが、#77村上はそのラインと交差するようにアウトへ向かい一直線に加速しホールショットを奪うのだ。
さらに4番手スタートだった#30坂本も#777setoのインを突いて3位に上がる。 とはいえレースペースは栄建設勢が明らかに速く、レース序盤から中盤までにワンツー体制を築いてしまう。 レースはそのまま、これまで何度も見てきたお馴染みの順位で、いつもの顔ぶれが上位でチェッカーとなるのだが、ドラマはそれで終わらなかった。 再車検が終わった頃、栄建設TBRチームの監督とクルーチーフが競技長に呼ばれ、トップでゴールした車両に規定違反があり失格の宣告を受けるのだ。 もちろん故意でやったわけではなく、エンジン交換作業の折にチェックを忘れた程度だったのだろう。 しかし、規定違反は事実であり、車検委員と競技長の裁定は受け入れなくてはなるまい。 そのせいで決勝の順位はひとつづつ繰り上がり、優勝は#777setoの頭上に輝くことになった。 「カートレースを10年くらいやってましたから、バトルには慣れているんですよ。なのでレース序盤で順位を落としましたが順位を挽回する自信はありました!」とseto。 VITA-01に初めて乗ったルーキーがデビューシーズンにも関わらず優勝を果たしたのであるから、本人にとっては複雑な気持ちだろうが優勝は優勝であり、これもまた快挙であったに違いない。 そしてタイトル争いだが、前戦までの3連勝でポイント優位に立っていた#778四倉が受賞。 今回2位に終わった#77村上がこの最終戦で優勝していれば状況も変わったはず。 あと1秒、レース終盤での追い上げが足りなかったことが悔やまれたに違いない。 <N0-Vitz> ~ネッツ札幌チームがタイトル奪取に成功!~
ヤリスをはじめとするトヨタ系コンパクトカーを主要扱い車種とするネッツトヨタ札幌の前身は、スターレットやスプリンターを扱っていたトヨタオート札幌であり、 その頃からトヨタ系レース部門のTRDスポーツコーナーを開設するなど、道内ディーラーには珍しくモータースポーツに積極的なディーラーだった。 そのせいもあって、ネッツトヨタ札幌は、トヨタがナンバー付車両ワンメイクレース「ネッツカップ ヴィッツレース」を全国展開し始めた初年度から参戦を開始するのである。 問題はなかなか勝てなかったこと。会社の方針として参加していたわけで、成績を重視してはいなかったろうが、現場のクルーにとっては「優勝」の二文字を手にしたいという想いがあったのは当然だろう。 転機となったのは、TGRがワンメイク車両をヴィッツからヤリスに変更した時だろう。 ただ旧型となったヴィッツのレース車両は多数存在し、その救済策として車両規定はそのままに「N0-Vitz」というクラスを新設したのである。 もちろんネッツ札幌チームも、思い入れのあるゼッケン730番をつけた旧タイプとなるNCP131型のレースカーを保有していた。 そして迎えた今シーズン、開幕戦こそ大ベテランの加藤由記に勝たれたが、次戦からは大量リードを奪っての独走で2連勝を達成。 なにしろラップタイムがライバル達より2秒も速いのだから桁違いの強さなのだ。 この最終戦もチームのメインドライバーである高見俊光が駆る#730は、かなり後方で#206えふで校長、#8高野麻衣、#821上田浩司らの激しい2番手争いを尻目に、17秒もの大量リードを奪っての独走ウイン。
北海道でTGR主導のヴィッツやヤリスのレースが始まって以来、そのクラスを問わずディーラーチームがシリーズタイトルを手中にしたのは初めてのことであり、その意味でもネッツ札幌チームの快挙は称賛されるべきだろう。
<TS-86/BRZ> ~KEI NAKAMURA、やっぱり第一人者だった!~
7月のシリーズ第3戦、最終ラップでの思わぬアクシデントで初出走以来の“無敵”の全戦優勝記録がストップした#32KEI NAKAMURAと、そのアクシデントの当事者でもある#34小野寺俊がこのクラスの2強であることに異論はあるまい。 ただ今回はその2人に割って入る強力な参戦ドライバーが登場した。3時間耐久にも出走し、速さを見せてくれた#33福原章智であり、なんと予選トップタイムをマークするのである。
とはいえ、やはり決勝レースとなれば話は別だった。レッドランプが消灯するや、これまではスタートから先頭に出ることの少なかった#32NAKAMURAがトップで第1コーナーをクリアしてゆく。
#33福原が続き、#34小野寺は3番手と、それぞれ1秒弱の間隔をあけて1列縦隊のままレースは進む。 レースラップは#33福原や#34小野寺の方がわずかに速いのだが、#32NAKAMURAは付け入るスキを与えず、残り2周の第1コーナーで#34小野寺は#33福原をパスしたところでチェッカー。 もちろんシリーズタイトルは#32NAKAMURAが手中にしたのは言うまでなく、その“牙城”を崩すのは容易ではないことがまたも立証されたのであった。
<N1-1000> ~大混乱の一戦はベテラン中村高幸が実力発揮!~
出走10台すべてが水田貴之率いるステップ・エンジニアリングのサポートを受けるというチームメイト同士なのだが、レースになればライバル同士になるのは当然のこと。 そのファイティングスピリッツが空回りしたのか大混乱の予選アタックとなってしまった。 予選がスタートした直後、早くも3台が絡むアクシデント発生。ガードレールを破損するほどのクラッシュで、すぐに赤旗が出され中断。 その事故処理が終わり、予選再開となったが今度は1台が一回転の転倒でコース上にストップ、またもや赤旗となるのである。
さらに1台が追突行為でタイム抹消のペナルティを受けたため、出走10台中、まともに予選通過したのは半数の5台という有様。 確かにコースに慣れていないドライバーや初出走の遠征ドライバーがいたことは理解できるが、あまりにレベルの低い予選だったのは事実。 そのあたり、ドライバー間の意思の疎通や、ベテランからのアドバイスはど徹底する必要があるかもしれない。 その大混乱の予選、トップタイムをマークしたのは#890中村高幸だった。 2番手の#9安藤義明に1秒2もの大差をつけたのだから堂々たるポールシッターである。 ここまで3連勝中の#33阿野雅樹だが、マシントラブルがあったようでピットイン、5番手と出遅れてしまった。 そして決勝、ポールから飛び出した#890中村が一気にリードを広げて、一時は後続に5秒もの差をつける独走。
激しかったのは2番手争いで、#9安藤のテールに#66酒井正和が食らいつき、
それに#33阿野も加わるのだが、#33阿野はスピンで後退。#66酒井も何度か#9安藤に並びかけるのだが、決め手を欠いてそのままゴール。
久しぶりの出走だった#中村、「これまでチームのメカニックやピットクルーに専念してたんですけど、たまにはドライバーもやってみるか・・と思って出場したら優勝してしまいました。 ちょっと練習したんですけど、やはり練習は大事ですね!」とニッコリ。シリーズタイトルは序盤戦から3連勝の#33阿野が獲得したが、今回に限っては実力充分のベテラン、中村高幸の強さが際立つ一戦であった。
シリーズチャンピオン#33阿野雅樹
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~地元にサーキットが存在することの幸せ!~
1980年代の半ば、六本木ではワンレン・ボディコンのお嬢さんたちがディスコで踊り狂い、銀座のクラブでは1本数万円のシャンパンが次々と抜かれ、ホステスの胸元に万札を差し込み遊びまわる男達がどこにもいた頃の話。
あだ花のような「バブル景気」に日本中が沸きかえり、有り余ったカネは幸いにしてモータースポーツ界にも流れ込んできた。
札幌のモエレ沼を囲むようなレイアウトのサーキット建設の噂が囁かれ、さらに千歳空港近くでも国際級サーキット建設の構想が浮上してきたのである。
この話の根元は「レイトン・ハウス」で知られる丸晶興産であり、それなりに具体性もあったのだが、バブルはわずか6年ほどで崩壊してしまう。
そうなればサーキット建設の話など当然ながら消えてしまうはずだったのだが、北海道内でたった一つ残ったのが十勝スピードウェイ建設だった。
これは事業主体が建設業団体であり、施工も自社で行うという他とは違った内容であり、工事は中断せず、バブル崩壊後となったが完成するのである。
サーキットは完成しオープンしたのだが、バブルは跡形もなく消え去りその後、当初の事業主体が解散してしまうなど紆余曲折はあったが、
現在のオーナーが名乗りを上げた事により経営は改善、今では北海道モーターレーシング界の中心として存在感は増すばかり。
確かに人口集積地の札幌から更別は250キロと遠隔地である。SUGOは仙台市内から30キロ足らずで、富士スピードウェイは東京から100キロほど、鈴鹿サーキットは名古屋から70キロで電車でも行ける。
それと比較すれば不利ではあるが、居住地域にレーシングコースがあり、この先もレースシリーズが開催され続けるという事実こそが重要なのだ。
遠隔地ではあるが、いつでも走れるコースがある事の“幸せ”を胸にレース活動を続けていこうではないか。
<TGR Yaris Cup>
~“道産子ドライバー”阿部晃太選手が期待に応える初勝利!~
北海道期待の#735阿部晃太も同等のタイムで、仕上がりは順調のようだ。
その晃太の父親である#135阿部晃久、キャップが緩んでしまい、オイルを吹いて走行を中断したが、エンジン本体の損傷はなかったようでレースに支障はない様子。
この“北海道で一番速い親子!?”である2人の走りから目を離すことは出来まい。
予選のタイムアタック、コースインして2周ほどタイヤに熱を入れ、クルマの調子を確認し集中を高めてからアタックが常道であり、
今シーズンは2連勝中の#34渡辺圭介をはじめとする4~5台が連なったまま同時にアタックに入る。
その中で最も勢いがあったのが#735阿部(晃)だろう。
「北海道シリーズですからね、ホームコースの地元ドライバーがチャンピオンにならなくちゃダメなんです! 頑張りますよ!」と気迫みなぎる走りで8月の第2戦でマークした自身の予選タイムを1秒近くも削り取って見事にポールポジションンを決めるのだ。
2番手に専有走行でトップだった#831橋本がつけ、チャンプ候補最有力の#34渡辺は4番手どまり。
その後方の5番手が#135阿部、「ここは親父の権威を見せないとね! 息子のサポートはもちろんだけど、俺自身ももっと上位を狙いますよ!」と意気軒昂。
とはいえ#34渡辺もタイトルを狙うためこの北海道シリーズに的を絞って参戦してきたドライバーで、前2戦の連勝を見ても実力は充分であり、レース展開がどうなるか期待が高まったのである。
そして決勝、最高のダッシュを見せたのはポールの#735阿部(晃)だった。レッドランプ消灯と共に一瞬クルマをセンターに振るが、そこからは一直線にアウト側を加速してコーナリング速度を上げて、後続とは明らかな差をつけてホールショットを奪うのだ。
そのまま2周目に入るところでフルコースイエローとなり、セフティカー導入のペースランとなる。
激しい先陣争いの中で、コーナーアウト側に設置されたトラックリミット違反防止のポラードが次々と倒されてしまったのだ。
そのコース修復のため、2周ほどのセフティカーランが続き、5周目にレース再開。
先頭は#735阿部(晃)で変わらないが、2番手につけた#831橋本にはフライングで10秒加算のペナルティが課され、
僅差の6番手にいた#390前田貴行にもポラード破損でペナルティ、この時点でトップ争いからは脱落となってしまう。
セフティカーランのため各車の間隔は縮まり、一直線となってのレース再開となるが、このチャンスを生かしたのは#34渡辺、先行する#753笠原潤一郎を抜き去り2番手に上昇してきたのだ。
「北海道シリーズとなってから道内勢が優勝するのは初めてで、それは嬉しいんですが、タイトルを取れなかったのが悔しい!でも光明は見えてきましたからね、来シーズンは負けません!」
と#735晃太が言えば、#34渡辺も「このタイトルを奪い返したいというなら僕もまた、来シーズンもこのコースに戻ってきます!」と宣言。
来シーズン、この両雄のバトルが大いに楽しみだし、2人の速さを上回るほどの力量を持ったドライバーの登場を待ちたいと思う。
<VITA-01>
~暫定表彰後のどんでん返し! seto jungo選手がデビューイヤーでの初優勝達成!!~
昨年まではこの最終戦、2レース開催のダブルヘッダーで行われ、それまでの上位陣が大きく入れ替わる可能性を持った一戦となっていたのだが、今シーズンは1レースのみ開催。
第4戦は出走して完走すればすべてのドライバーに同一ポイントが与えられる耐久レースであり、カウント外。つまり純粋なスプリントレースとしては4戦のシリーズなのだ。
そのため例年より最終戦の重要性が減少、コンスタントに高得点を獲得するレース戦略が必要なシーズンとなっていたわけである。
このVITA-01レースでは道内最大勢力を誇る恒志堂レーシング、翌週に岡山で開催されるスーパー耐久レースを優先してか、今回も#910工藤大祐の1台だけが出走。
とはいえ、ここまで耐久を含めて4連勝中の#778四倉悠聖、瀬戸惇吾改め#777「seto jungo」を擁する栄建設TBRチームの他、
#77村上泰規や#30坂本幸照など、
トップを争うレギュラー陣はすべて参戦しているのだから最終戦にふさわしいバトルを展開してくれるはずだ。
朝9時からと早い時間からとなった予選、薄日は差すものの路面温度は低いままで、どうタイヤの温度を上げるかが勝負となった。
そのためほぼ全力で周回を重ねタイヤグリップを確認し、アタックは終了直前という作戦のチームが多くなったのは当然だろう。
まずターゲットタイムである1分30秒台に入れてきたのは#778四倉、それを同じラップでかわしたのが#77村上で、#30坂本も3番手に上がってくるが第1コーナーアウト側のトラックリミット違反防止用ポラードを倒してしまいピットインを余儀なくされる。
その間に#777setoが3番手タイムをマークし、上位は予想通りの顔ぶれとなる。
予選終了直前、「なかなかタイヤの温まりが遅くて、ラストのラストまで気を抜かずにアタックしようと思ってました。その最後のラップは全力で走り切りました」と言う#778四倉。
そのタイムは昨シーズン全戦優勝というパーフェクトを演じた上野大哲がマークしたタイムを上回る好タイムでポール奪取に成功。
2番手は、「最後のラップに掛けていたんですが、前のクルマに追いついてしまいアタックを諦めなければなりませんでした。あれが無かったらポールを狙えたと思うんですが・・・」と残念そう。
いずれにせよセカンドローまでは栄建設TBRチームと足立眼科Y‘Sチームが交互に並ぶという、これまでも見慣れたグリッドとなった。
そして決勝、ポールの#778四倉が#77村上の機先を制するように進路をインに寄せるのだが、#77村上はそのラインと交差するようにアウトへ向かい一直線に加速しホールショットを奪うのだ。
さらに4番手スタートだった#30坂本も#777setoのインを突いて3位に上がる。
とはいえレースペースは栄建設勢が明らかに速く、レース序盤から中盤までにワンツー体制を築いてしまう。
レースはそのまま、これまで何度も見てきたお馴染みの順位で、いつもの顔ぶれが上位でチェッカーとなるのだが、ドラマはそれで終わらなかった。
再車検が終わった頃、栄建設TBRチームの監督とクルーチーフが競技長に呼ばれ、トップでゴールした車両に規定違反があり失格の宣告を受けるのだ。
もちろん故意でやったわけではなく、エンジン交換作業の折にチェックを忘れた程度だったのだろう。
しかし、規定違反は事実であり、車検委員と競技長の裁定は受け入れなくてはなるまい。
そのせいで決勝の順位はひとつづつ繰り上がり、優勝は#777setoの頭上に輝くことになった。
「カートレースを10年くらいやってましたから、バトルには慣れているんですよ。なのでレース序盤で順位を落としましたが順位を挽回する自信はありました!」とseto。
VITA-01に初めて乗ったルーキーがデビューシーズンにも関わらず優勝を果たしたのであるから、本人にとっては複雑な気持ちだろうが優勝は優勝であり、これもまた快挙であったに違いない。
そしてタイトル争いだが、前戦までの3連勝でポイント優位に立っていた#778四倉が受賞。
今回2位に終わった#77村上がこの最終戦で優勝していれば状況も変わったはず。
あと1秒、レース終盤での追い上げが足りなかったことが悔やまれたに違いない。
<N0-Vitz>
~ネッツ札幌チームがタイトル奪取に成功!~
北海道でTGR主導のヴィッツやヤリスのレースが始まって以来、そのクラスを問わずディーラーチームがシリーズタイトルを手中にしたのは初めてのことであり、その意味でもネッツ札幌チームの快挙は称賛されるべきだろう。
<TS-86/BRZ>
~KEI NAKAMURA、やっぱり第一人者だった!~
7月のシリーズ第3戦、最終ラップでの思わぬアクシデントで初出走以来の“無敵”の全戦優勝記録がストップした#32KEI NAKAMURAと、そのアクシデントの当事者でもある#34小野寺俊がこのクラスの2強であることに異論はあるまい。
ただ今回はその2人に割って入る強力な参戦ドライバーが登場した。3時間耐久にも出走し、速さを見せてくれた#33福原章智であり、なんと予選トップタイムをマークするのである。
とはいえ、やはり決勝レースとなれば話は別だった。レッドランプが消灯するや、これまではスタートから先頭に出ることの少なかった#32NAKAMURAがトップで第1コーナーをクリアしてゆく。
#33福原が続き、#34小野寺は3番手と、それぞれ1秒弱の間隔をあけて1列縦隊のままレースは進む。
レースラップは#33福原や#34小野寺の方がわずかに速いのだが、#32NAKAMURAは付け入るスキを与えず、残り2周の第1コーナーで#34小野寺は#33福原をパスしたところでチェッカー。
もちろんシリーズタイトルは#32NAKAMURAが手中にしたのは言うまでなく、その“牙城”を崩すのは容易ではないことがまたも立証されたのであった。
<N1-1000>
~大混乱の一戦はベテラン中村高幸が実力発揮!~
出走10台すべてが水田貴之率いるステップ・エンジニアリングのサポートを受けるというチームメイト同士なのだが、レースになればライバル同士になるのは当然のこと。
そのファイティングスピリッツが空回りしたのか大混乱の予選アタックとなってしまった。
予選がスタートした直後、早くも3台が絡むアクシデント発生。ガードレールを破損するほどのクラッシュで、すぐに赤旗が出され中断。
その事故処理が終わり、予選再開となったが今度は1台が一回転の転倒でコース上にストップ、またもや赤旗となるのである。
さらに1台が追突行為でタイム抹消のペナルティを受けたため、出走10台中、まともに予選通過したのは半数の5台という有様。
確かにコースに慣れていないドライバーや初出走の遠征ドライバーがいたことは理解できるが、あまりにレベルの低い予選だったのは事実。
そのあたり、ドライバー間の意思の疎通や、ベテランからのアドバイスはど徹底する必要があるかもしれない。
その大混乱の予選、トップタイムをマークしたのは#890中村高幸だった。
2番手の#9安藤義明に1秒2もの大差をつけたのだから堂々たるポールシッターである。
ここまで3連勝中の#33阿野雅樹だが、マシントラブルがあったようでピットイン、5番手と出遅れてしまった。
そして決勝、ポールから飛び出した#890中村が一気にリードを広げて、一時は後続に5秒もの差をつける独走。
激しかったのは2番手争いで、#9安藤のテールに#66酒井正和が食らいつき、
それに#33阿野も加わるのだが、#33阿野はスピンで後退。#66酒井も何度か#9安藤に並びかけるのだが、決め手を欠いてそのままゴール。
久しぶりの出走だった#中村、「これまでチームのメカニックやピットクルーに専念してたんですけど、たまにはドライバーもやってみるか・・と思って出場したら優勝してしまいました。
ちょっと練習したんですけど、やはり練習は大事ですね!」とニッコリ。シリーズタイトルは序盤戦から3連勝の#33阿野が獲得したが、今回に限っては実力充分のベテラン、中村高幸の強さが際立つ一戦であった。
シリーズチャンピオン#33阿野雅樹