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2021-10-02 VITA&Vitz3時間耐久開催報告
チェッカーまで残り15分の大激戦! ラストまで続いた緊張の神経戦バトルを制したのは⑫恒志堂レーシング12号機チーム!! 2021 北海道クラブマンカップレース第4戦 2021年 9月26日(日) 十勝スピードウェイ(クラブマンコース) ~アマチュアのレース環境充実を目指して!~ ジムカーナドライバーでもあった神谷誠二郎がコンストラクターとして知られた鈴木板金(ベルコ)から“のれん分け”の形で独立、日本レース業界のメッカである三重県鈴鹿市に「ベルコ・ウエスト」を開業したのは昭和48年のことだった。すぐさま当時人気だった軽自動車エンジンを使ったFL550や、スバル製水平対向エンジンを搭載するFJ1600など、ミニフォーミュラの製作を開始、そのほとんどが好成績を収め、レーシングマシン・コンストラクターとしての基盤を作ってゆく。 昭和58年には現在の社名である「ウエスト・レーシングカーズ」に変更されるのだが、この「ウエスト」が次にレース業界の注目を集めたのは昭和63年、日産からの依頼を受けて制作した「ザウルス」だった。この「ザウルス」はあまり人気とならなかったが、その小型版として誕生したマーチ用1000ccエンジン搭載の「ザウルスJr」は大きな人気を呼ぶ。北海道でも倶知安のHSPで平成元年からシリーズ戦が組まれ、30年以上経つ今でも「ザウルスJr」は十勝スピードウェイを元気に走っている。 その「ザウルス」のシングルシータースポーツの路線をさらに発展させ、アマチュアドライバーに最適なマシンを提供しようと企画されたのが「VITA-01」である。基本は鋼管スペースフレームだが、両サイドにセミモノコック構造も組み込んで安定した操縦性と安全性を高め、トヨタ・ヴィッツRS用の1500ccエンジンとミッションなど駆動系をそのままリアミッドに搭載したのが「VITA-01」。発表された平成22年に鈴鹿サーキットでのシリーズ戦が始まり、今では十勝、筑波、もてぎ、富士、岡山、オートポリスと全国7ヶ所で開催される人気カテゴリーとなっている。なかでも十勝スピードウェイは「VITA-01」発売の翌年にはクラブマンカップシリーズに導入を決め、現在でも常に20台近い参加台数を確保し、さらにサーキットコース所有のレンタル車両での手軽な参戦サポートを提案するなどの施策もある重要なシリーズ戦となっている。 すでに総販売台数が200台を大きく超え、市販レース車両としては異例の人気となっている「VITA-01」、車両価格も本格的レース車両としては300万円台と比較的安価だし、相当数が出荷されているため中古車両も手に入りやすい。さらに海外にも進出しアジア圏でも人気上昇中で、アマチュアが本格的レーシングカーを体験するには最適のカテゴリーになったと言えるだろう。 ~スプリントと違った耐久レースの楽しさを提供!~ 人気の「VITA-01」、エンジンがヴィッツ用であり車体重量も軽いため燃費も良好で、それは長距離を走る耐久レースにも有効なポイントである。そのため、デビュー当時から「VITA-01」のセミ耐久は各地のサーキットで開催されてきた。もちろん十勝でも例年開催されており、スプリント主体のクラブマンカップシリーズでは唯一の耐久戦として親しまれてきた。 十勝での「3時間耐久」、大きなポイントは「VITA-01」と「N1-1000」との混走だろう。「N1-1000」とはN1仕様のヴィッツである。 平成12年、画期的な日本初のナンバー付車両レースとして始まった「ネッツカップ・ヴィッツレース」は超人気カテゴリーとなり国内最大規模のワンメイクレースに成長している。 ただ、ヴィッツのモデルチェンジのたびに参戦車両のレギュレーションが新しくなり、旧型は参加できなくなるのだ。その多数存在する初代ヴィッツSCP10型の旧車救済策として十勝独自に考えられたのが「N1-1000」である。ネッツカップカーだった初代ヴィッツのナンバーを切り、よりポテンシャルアップされるN1仕様にすることで生かそうとしたのである。それはある程度成功し、現状でも一定の常連参加ドライバーを確保している。また、そのポテンシャル向上、わずか1000ccのノーマルエンジンながらN1仕様になったことで、昨年までの現役ネッツカップカーの1500cc車より相当早いラップタイムをマークすることができるのだから。 その「VITA-01」を1クラス、「N1-1000」を2クラスとする2カテゴリー混走の十勝3時間耐久、年に一度だがスプリントとは全く違ったレースの楽しみ方を提供してくれる。10周程度のレースなら、スタートしてしまうと、あとはドライバーの能力だけの勝負になってしまう。しかし耐久レースではピットストップ戦略や、複数のドライバーが交代して乗るという要素が加わる。ドライバーばかりじゃなく、チーム監督やピットクルー、サポート要員などすべてのメンバーが“主役”になれる総力戦なのだ。その“魅力”を知ってしまった多くのレース関係者、今年も「TOKACHI3時間耐久」には19チームが参戦してきたのである。 ~今年は豪華なメンバーが参戦!~ 今年の参戦チーム、そのメンバーラインナップを見ると国内レースシーンでよく目にするドライバーがいることに気づく。1クラスには現役のスーパーGTドライバーが2人、クラフトスポーツGTRの千代勝正とゲイナーGTRの平中克幸である。86&BRZレースのプロクラスで活躍中の鶴賀義幸、スーパー耐久ST3クラスチャンピオンの大草りきなどの顔も見える。2クラスにも86&BRZレースの創成期からプロドライバーに伍して活躍していた馬場優輝、そしてスーパー耐久の有力ドライバーだった大橋正澄などが参戦しているのだ。 さらに競技長である。レース運営スタッフのトップには和田孝夫が就任してくれている。そう、あの人気最高だった富士GCや、国内トップフォーミュラだったF3000で、横浜ゴムADVANの“顔”としてレース界を牽引してくれた和田孝夫である。 ◆Wada Racing Sports ⇐ クリック いつになく豪華な顔ぶれとなった今回、トップドライバーがどんなタイムを叩き出してくれるのか、それに地元勢がどう切り込んでゆくのか、レースの面白さ満載の「TOKACHI3時間耐久」は12時50分、2列縦隊でのローリングスタートを迎えるのだ。 ~予選アタックは“助っ人”ドライバーの大競演!~ 午前中の予選タイムアタック、今回は1チーム3名のドライバー登録が認められているが、予選タイムとして生かされるのはA、Bのドライバーのタイムだけ。そして、予想通りそれぞれのチームで好タイムをマークしてくれたのは“助っ人”のBドライバーだった。ポールタイムを叩き出したのはゼッケン61番「HDC日本平中自動車」のBドライバー平中克幸。 2番手タイムはゼッケン12番「恒志堂レーシング12号機」のBドライバー鶴賀義幸。 ただし予選タイムには反映されないが、実際の最速タイムをマークしたのは61番「HDC日本平中自動車」のCドライバー四倉悠聖であり、この“助っ人”たちがレースを大いに盛り上げてくれるのである。 2クラスにも“助っ人”ドライバーが数多く参加していたのだが、こちらはレギュラー陣の方が好タイムをマーク。このクラスでは最も古くから走り続けているゼッケン5番「NMR☆HOP☆STEP」の面野一がトップ。 ただ面野は今年のシリーズ第2戦では今回より1秒早いタイムをマークしており、余裕を持ったアタックだったようだ。 ◆Aドライバー予選結果 ◆Bドライバー予選結果 ◆Cドライバーフリー走行結果 ~手に汗握るレース最終盤の追い上げバトル!~ 決勝のスタート、ポールから出た61号車の平中克幸が徐々にリードを広げてゆく。2番手は12号車の佐藤元春がつけ、恒志堂レーシングのチームメイトである後方の35号車、310号車よりラップタイムはコンマ5秒ほど早く、確実に2番手をキープ。 クラス2はスタートで先行した2号車「Drivers.Academy」の馬場優輝がトップ、5号車と9号車「真狩モッコリ昭和トラック」の安藤義明が少しづつ差を広げられながらも続いている。 1クラスのトップが3周目に入る頃、早くも2クラスの後方集団に追いつき、次々とラップ遅れにし始める。スーパーGTやスーパー耐久など性能差があるクルマが混走するレースでは、こんな状況は当たり前であり、管制から各ポストに「青旗掲示」が的確に指示されたこともあってレースは順調に進む。 その状況に変化が出たのはスタートから1時間40分を過ぎる頃、上位陣が2回目のピットストップに入ってきた時間だった。トップの61号車、ガス欠症状が出たようで、想定より早めに入ってきたのだ。この混乱があったせいか、既定のピットストップ時間である3分を30秒ほどオーバーしてピットオフ。しかし12号車は規定通りにピットアウトしており、これで26秒ほどあった61号車のリードが一瞬にして消えてしまい、12号車の先行を許してしまうのだ。 61号車のさらなる不運は、スタートから2時間15分頃の3回目のピットストップ時期だった。12号車を追い上げようと、早めにエースドライバーの平中克幸に交代してコースに送り出したのだが、その直後にコースオフ車両がありフルコースイエロー(FCY)で全車両スロー走行。 これを逃さず12号車はピットインし作業時間を消化するとトップをキープしたままコースイン。61号車は22号車「CHICK AND KING」にも45秒もの差をつけられて3番手に後退してしまう。 それでも61号車はそこから誰よりも速いラップタイムを連発して追撃を開始し、すると浮上のチャンスはすぐに訪れる。レースも残り15分ほどになった頃、再びコースオフ車のレスキューのためFCYとなり、ペースカーランとなったのだ。これで12号車のリードは消え去るはずだったのだが、61号車の前にはスロー走行中のクラス2の車両。これを抜いてはならず差を縮めるチャンスを生かせなかったのである。 いかにも耐久レースらしい結末。同等の力量を持つドライバーを選任し、安定したラップタイムを刻み、ピットストップでのミスなど犯さず、レース状況を見ての戦略を立てる。この耐久レースの“鉄則”を守った『恒志堂レーシング12号機』チーム、Aドライバーの佐藤元春は「ライバルはGTなどの強豪ドライバーでしたが、このコースを最も走り込んでいるのは僕たちですからね。いい勝負をしてやろうと思ってました!!」と見事に優勝のチェッカーを受けた。 クラス2も同様でドライバーの力量と戦略が結果に出たようで5号車が2番手の9号車に1周近い1分22秒もの大差をつけて優勝。Bドライバーの面野一、「スプリントだとそれなりの成績が出ているんですが耐久はなかなか勝てない。同じSTEPのサポートを受けている仲間のようなチームばかりなんですが、その中でも競争はありますからね。今回はしっかり準備をしましたから、どうしても勝ちたかったです!」と喜びを語ってくれた。 ◆1クラス 優勝、2位、3位 ◆1クラス 4位、5位、6位 ◆2クラス 優勝、2位、3位 ◆耐久レースラップチャート 3時間耐久ラップチャート ⇐ クリックしてね
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